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前もってまずは真冬が両親と話をすると決めていたものの、颯人からしたら真冬の身体や気持ちが一番大事なのだ。無理をする必要もないし、させるつもりもなかった。
颯人は真冬の手に手を重ねたまま、正面の真冬の両親へと向き直る。
「あのっ!今日は時間を割いていただきありがとうございます。私は犬飼颯人と言います。今回は真冬さんとの結婚のご報告に参りました……」
深く頭を下げつつも颯人は様子を窺う。
「あなた、随分若そうに見えますが」
「あ、今20歳です」
頭を上げて颯人は前にいる真冬の両親を見る。
「は、20歳………。し、仕事は…」
「今は大学生です」
その言葉に唖然とした表情をした真冬の母はまたしても鋭い視線で真冬に投げかける。
その腕は怒りからかプルプルと震えている。
「こんな若い男に現を抜かして…。学生のうちに子供まで…、恥ずかしくないのっ?後ろ指さされるのはあなたなのよ!真冬!私はっ、そんな風に育てた覚えはない!」
「静香、少し落ち着きなさい」
大きな声を出しながら立ち上がった母親をたしなめたのは落ち着いた低い声。
不機嫌という訳でもなく、ただ静かな声だった。
隣に座る真冬の父であった。
その言葉にぐっと拳を握るも、座ることはせずそのまま後ろを振り向く。
「あなには失望したわ。もう何も話すことはありません……」
そう言ったあと、一度も振り返ることなく母親は部屋から出て行った。
その様子を見ながら父親は軽くため息をつくと真冬たち二人に視線を戻す。
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