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リビングのテーブルにお茶の入ったティーカップを置くと、静香の前に座りそっとその様子を窺う。
その視線に気づいているのか、静香はゆっくりとあたりを見回したあと目の前に置かれたティーカップに手を伸ばした。
「……ちゃんと片付いているのね。あなた片付け苦手なのに……」
静香の言葉に真冬は驚いた表情を見せる。挨拶に行った時とは打って変わっての穏やかな口調に、そしてそのことを知っていた事実に。
「どうして、それを………」
「そりゃわかるわよ。これでも母親だから…」
怒られるのが嫌で、家ではちゃんとしていたつもりだった。部屋だって気にして頑張って片づけていたのだ。
「彼が、家事全般してくれているから。私より器用でなんでもできるから甘えてしまっているけど…。私も手伝おうとするんだけど、いつも仕事を増やすだけだから」
「そう…………」
静香は目を伏せて、手に持ったカップに口をつける。
「彼、挨拶に来た後から定期的にうちに来ていたのよ」
ティーカップを机に置くと、静香は真冬に視線を合わせる。
「そう、なの?」
ちらりと視線をキッチンにやると何も聞こえていないのか、気を遣ってくれているか、颯人はこちらを見ることなくリズミカルに野菜を切っている。
「やっぱり何も聞いてなかったのね……。あなたがどれほど生徒に慕われているかとか、普段のあなたの様子とか…。あと、お腹の子のエコー写真とか見せてくれたわ。…順調なのね」
静香の言葉に真冬は大きくなったお腹に手をやると頷く。
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