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約束の4月1日を前にした3月31日。
真冬はスマホの連絡文を凝視する。
犬飼颯人 4月1日の朝、少しだけ時間ください
時間は取らせないから真冬の住む場所まで来るとのこと。
1か月ぶりになる再会に真冬も今からソワソワしてしまう。
自分も好きだと言うべきだと思っている。
だが、ちゃんと言えるのか。
そんな心配ばかりしてしまっているのだ。
外の自分を保って作っているときはスラスラと言葉が出るのに、素が出てしまうと途端に言葉が出てこなくなる。
国語の教師であるのに不甲斐ないと思う。
気分を落ち着かせるため、アニメのDVDをディスクにセットする。
だがやはり内容は入ってこない。
これではダメだと、真冬は先日新たに購入したDVDに変更する。
新シリーズが始まるとときには心躍らせたヒーローものアニメだ。
数人いるヒーローの赤髪の戦士が目に留まる。
今まで真冬はアニメは物語を重視していた。
細部まで拘って作られた世界観や、ちりばめられた伏線。
そしてそれらを上手に回収していきながら起承転結でキレイにまとまっている。
そいうった物語が好きだった。
だから人物に対してはそこまで思い入れはなかった。
それが今は赤い髪をしているとついつい目がいくようになってしまった。
赤髪を気にしつつアニメを見続ける真冬。
そうして夜は更けていった。
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