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その日真冬はインターホンの音で目が覚めた。
覚醒するにしたがって体中が悲鳴を上げていることに気づく。
「あ、いたた…」
目覚めた場所はテレビ前に置かれたビーズクッション。
テレビからは音が漏れている。
「また寝落ちしちゃった…」
言いながらまたしても鳴るインターホンに真冬は顔色を変える。
床に落ちているスマホで時間を確認する。
7時30分。
「え…」
慌てて飛び起きた真冬はハンガーラックにかかってあるシャツとスーツを急いで剥ぎ取り、パジャマを脱ぎ捨てた。
颯人の指定した時間は7時。
早いとは思ってはいたが、了承したのは真冬自身。
「ご、ごめんなさいっ」
服だけ着替えた真冬は慌ててドアを開ける。
「おはよ!センセイ!下で待ってたんだけどなかなか来ないから」
眩しい笑顔が真冬の心臓に悪い。
気にした風もなく颯人が笑ってそこにいた。
「お、おはよう…」
「あ、ごめん仕事前だよな」
颯人は真冬のスーツを見て頭を下げる。
颯人としては仕事と思っていたため早い時間の指定をしていた。
仕事前に少しでも会えればという意図だった。
「いえ、今日は学校は休みよ」
「え、でもスーツ」
「ね、寝坊して…適当に服着ただけなの。それで今日は何かしら?」
言ってはっとして口を噤む。
またしても可愛くない言い方をしたと後悔したのだ。
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