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だが当の颯人は気にした風でもなく、にっかりと笑った。
「これ」
そう言って颯人は後ろ手に隠していた花束を真冬の目の前に差し出す。
ピンクを基調としたガーベラやチューリップなどの春の花。
「お花…!」
「贈り物はやっぱり花束かなって」
色とりどりの花束を見て真冬は顔を綻ばせる。
「あ、ありがとう…。可愛い花束……、きゃ!」
そんな真冬を見て颯人が花束ごと目の前の真冬を抱きしめる。
「センセイ可愛い!これからよろしくセンセイッ!やっと!やっとだ!」
薄手のシャツから感じる筋肉質な胸板に顔をうずめたまま真冬は緊張で動けなくなった。
男性には免疫がないのだ。
ドキドキと力強く聞こえる颯人の心臓よりも真冬の心臓のほうが早い。
「あ、あの…ここではちょっと…」
ハタと気づいたのはここは共用の廊下であるという事。
隣の部屋から鍵を開ける音が聞こえた瞬間、真冬は颯人を押しのけ自分の部屋の玄関へと押し込んだ。
「誰かに見られるから」
「オレは別にいいけど。今日から彼氏彼女だし」
「わ、私は気にするのよ。とりあえず上がって…」
そこまで言って真冬は家の中の現状を思い出す。
昨日観たままになってるアニメのDVDのケースは散らばっているし、さきほど脱ぎ捨てたパジャマもそのまま。
しかも布団も敷きっぱなしなのだ。
「10分…いえ、5分待ってて」
玄関に颯人を置いて急いで部屋に入った真冬はとりあえず布団を押し入れに入れようと襖を開けた。
「わっ!!…きゃあ!!」
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