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「センセイ、ご飯できたぜ」
簡単なものしかできないと言っていた颯人が作ったのはパスタとスープ。
真冬の家には何もなかったので颯人は近所のコンビニで簡単に作れる材料だけ買ってきて調理をしたのだ。
「すごい、おいしそう。いただきます」
「センセイの冷蔵庫、ゼリー飲料と栄養ドリンクと野菜ジュースしか入ってないんだもんな。キッチンにもカップ麺と栄養補助スティックとかそんなんばっかだし」
「生きるためだけに食べるだけだったから。でも体壊すのは仕事で迷惑がかかるからちゃんと栄養がとれるものを選んでたんだけど」
食に対して興味がない真冬は不器用さも相まって料理をすることがない。
必要最低限の鍋とフライパンはあるが出番はそうそうない。
「センセイ、野菜ジュースとか栄養補助の食品よりちゃんとした食材から栄養摂る方がいいんだぜ」
「よく知っているわね」
パスタをフォークに絡めながら真冬が感心したように颯人を見る。
「先月からレストランのバイト始めたんだけど、そこの先輩が言ってた。そこ、大学からも近いからこれからはそこ一本にしようと思ってるんだ。レシピも色々教えてもらえるし。そうだ、センセイの好きな料理のレパートリー増やしとくからまた作りにきてもいい?」
「それは私はありがたいけど」
「料理嫌いじゃないから勉強するよ。センセイと食べられるんなら嬉しいし」
そう言うと颯人は照れたように笑った。
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