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パスタを食べ終わった後、二人並んで食器を洗う。
すぐに後片付けを始めた颯人にそれくらいはと真冬も一緒にシンク前に立ったのだ。
「センセイとこって古いってか、レトロっての?結構年数経ってそうだよな」
泡のついたお皿を水で流しながら颯人が部屋を見渡す。
「安かったから…。私大学のときもアルバイトとかしたことがなくてお金がなかったの。ここは礼金敷金不要だったから。セキュリティを考えて引っ越ししろとは同僚からも言われてるんだけどね。なんだかそのままズルズルと…」
「確かに!センセイ綺麗し可愛いから心配だな。何かあったらすぐに駆け付けるから電話してくれよ」
ストレートに伝えてくる颯人に真冬の顔が真っ赤になる。
洗い物を終えて手を拭きつつ颯人は隣に立つ真冬を見る。
「センセイ、真っ赤」
「わ、私…もう先生じゃないわ…」
なんだか先生と呼ばれると生徒であった颯人を思い出すため落ち着かなかったのだ。
「え…あっ!そ、そっか…」
颯人は真冬を見たあと、顔を赤くしながら頬を掻く。
「じゃ、じゃあ…ま、真冬って呼んでもいい………?」
「う、うん」
「へへ、嬉しい。真冬好きだ」
ぎゅっと抱きしめてくる颯人に気持ちを伝えるなら今だと真冬は決意する。
「あ、わ…わた………私……」
「ん?」
「いえ、あの…、ご、ご飯美味しかった」
「あ、マジで?良かった」
肝心なところで言葉が紡げず真冬は不甲斐なく思う。
こんなことではダメだ、と真冬は意を決して頭を上げる。
「あの………っ!」
そこには思ったよりも至近距離に颯人の顔があった。
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