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交際
ピピピ
ピピピピピ
ピピピピピピピ
もぞもぞと布団から出た手がさ迷い、未だアラーム音鳴るスマホに触れた。
そのまま布団に引き込まれたスマホのアラーム音がやがて鳴りやむ。
「朝…」
布団からのっそりと顔を出して、窓のカーテンから漏れ出る朝日に顔を顰める。
窓とは逆にあるテレビから小さい音が漏れ、夜から付けっぱなしになっていた事実を告げる。
「昨日、寝落ちしたんだった…」
周りに散らばるのはアニメのDVDのケースの残骸。
いや、この部屋はそれだけでは済まない。
ベッド周りは服やら段ボールやらがごちゃごちゃ散らばっており、足の踏み場もない。
それでもこの部屋の住人小堀真冬は器用にそれらの物を避けてハンガーラックにかかってあるスーツへと手を伸ばした。
全部で5着ほどのスーツと白いシャツだけはきっちりとハンガーにかけられている。
色はネイビー、黒、グレーなどの暗色。
それらにストライプが混じっているくらい。
その中の一つダークグレーのスーツを取って姿見の前に立つ。
のろのろとパジャマを脱ぎ捨て、補正下着を手に取る。
大きな胸を潰すための下着。
思春期あたりから大きくなり始めた胸を見られるのが嫌だった。
真冬のコンプレックスでもある。
それは親からも顔を顰められるほど。
みっともないと言われてから小さく見えるようにするため色々調べ、今はこのホック付きの補正下着に落ちついた。
少し苦しくもあるが、スーツを着るにはこのほうがすっきりして見栄えもいい。
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