333人が本棚に入れています
本棚に追加
狂犬と呼ばれ恐れられていたため女子はあまり近寄らなかったが、颯人はわりと整った顔立ちをしている。
そんな颯人を間近に見て真冬の心臓が早鐘を打つ。
意思の強そうな黒い目に吸い込まれそうになり目が離せない。
「犬、か…いく…」
「真冬…」
颯人の手がそっと真冬の頬に添えられる。
どんどん近づく顔に真冬は目を閉じるのも忘れて熱情を湛えた目をずっと見ていた。
温かく柔らかいものが唇に降ってきたことで、キスをされているのだと気づく。
一度離れては角度を変えてキスが落とされる。
何度も繰り返され、真冬の体温もそれに乗じて上昇していく。
「真冬、好きだ…」
唇が離れても未だ至近距離にいる颯人が囁く。
「わ、私も……す、好き…」
その言葉に颯人は驚きに目を開いて、そして嬉しそうに笑った。
「嬉しい」
言いながら食むように優しく口づけたあと、ぎゅっと真冬を抱きしめる。
「今日真冬が休みだったらバイト入れるんじゃなかったな…」
颯人は真冬の頭上にスリスリと頬を寄せながら、はーっとため息をつく。
「あ、ごめんなさい。そういうこと伝えるべきだったわね」
「んー、まあこれからはそうしよ。一緒に慣れていこうって言ったし。オレにも何かあったら遠慮せずに言ってくれよ」
「え、ええ。わかったわ」
先ほどの余韻で真冬は颯人と目が合わせられず視線をさ迷わせる。
そんな様子さえ可愛いとばかりに目を細めて楽し気に見つめる颯人。
「じゃあ、今度の休みはデート行こうぜ」
「で、デート…」
「そ。二人でどっか行こう」
額を付き合わせて颯人が嬉しそうに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!