交際

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「本気…なのかな…」  姿見の前で、真冬は昨日の出来事を思い出す。  赤い顔をして真剣な表情で自分を好きだと言ってくれた元生徒。  あのあと、真冬は何も言わずその場を逃げ出した。  何か言うべきだったのだろうが言葉が見つからず、その場にいることが居たたまれなくなったのだ。  真冬が颯人を知ったのは颯人が入学してきたとき。  喧嘩ばかりの問題児だと聞いていた。  だが真冬から見る颯人は、学校はサボりがちだが真冬の授業には出ているし、話すとぶっきらぼうではあるがちゃんと受け答えができる普通な生徒であった。  そしてそんな颯人に告白をされたのは実は昨日が初めてではない。  真冬は3年前の颯人が高校1年の夏の終わりに一度告白をされていた。 『オレ、センセイが好きだ』  昨日と同じ真っ赤な顔でそう言って射るような視線を向けてきた。  23年間恋愛とは程遠い生活をしてきた真冬にとって初めての告白だった。  そんな人生初めての告白にときめいてしまったのは真冬だけの秘密だ。  だが、真冬はすぐさま自らの立場を思い出す。 『私は教師、あなたは生徒。それ以上でも以下でもない』  それでも食い下がる颯人に真冬は生徒は対象外と言い放った。 『オレの気持ちは変わらねぇ!卒業式の日首を洗って待ってろよ』  その言葉を最後に、その後颯人は生徒としてしか接することはなかった。  だからまさか本当に卒業式の日にもう一度告白されるとは思っていなかったのだ。
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