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駅近くの裏通りにそのカラオケ店はあった。
真冬は店内に入り、颯人から連絡のあった部屋番号の書かれたドアを開けた。
「センセイっ」
小さな部屋だった。
奥の四角い椅子に腰かけていた颯人が入ってきた真冬を見て嬉しそうに笑う。
「迷わなかった?」
「ええ。大丈夫よ」
そんなやり取りをしながら真冬はエル字になった椅子の颯人から離れた場所へと腰を落ち着かせる。
それでも狭い室内で頑張っても4人座れるほどのスペースなので、二人の距離は言うほど遠くはない。
真冬は改めてこの密室で元生徒とは言え男性と二人っきりという事実に気づかされ心臓が早鐘を打ち始める。
しかも相手は告白をしてきた相手。
生徒だとわかってはいつつときめいてしまった相手でもある。
だがそんな緊張の心の中とは打って変わって、その表情が変わらないのは氷先生たる所以。
端からはそんな緊張していることなど露ほども疑われないだろう。
だが、じっと真冬を見る颯人がその距離を詰める。
「センセイ、もしかして緊張してる…?」
「なっ!そ、そんなこと……」
あっという間に距離を縮められ真冬の隣にきた颯人に覗き込まれるようにして見られ、さすがの真冬も言葉に詰まる。
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