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「部屋が汚いのは初耳だけど、オレ片づけ得意だぜ。料理もするし。それにオタクなのは知ってる。センセイが学校では気を張ってるのも、素のセンセイは不器用なんだってこともちゃんと見てたから知ってる」
「で、でも…」
「あと、何不安なの?」
「わ、私……ない」
「ん?」
「私!誰かと付き合ったことないの!」
「え…?マジ…?」
さすがにこれは引いたかと、真冬は俯いたまま颯人を見る勇気が出なかった。
「最高なんだけど!」
がばりと颯人が真冬に抱き着く。
「へ…、ちょ、ちょっと!犬飼くん…」
思ってもみない颯人の行動に焦った声が出る。
「ヘヘ、オレも初めてだから一緒に慣れていこう」
「い、犬飼くんも…?」
「オレ高校1年のときからセンセイのこと好きなんだぜ。クソダッセェけど、今心臓やばいし」
真冬の耳は颯人の胸にある。
ドクドクと鳴る音は自分と同じ速さかそれ以上か。
ぎゅうぎゅうと抱きしめられて真冬はいっぱいいっぱいだ。
だが、そこでふと重要なことに考え付く。
「ま、待ってダメよ!3月いっぱいまではあなたはうちの生徒」
ぐいっと押された颯人は固まる。
「マジか…あと1か月…。それからなら付き合ってくれるってことでいい?」
「そ、そう…ね」
もはや断る口実もなくなってしまった真冬はそう言うしかなかった。
「まあ今まで2年以上も待ったからな。今更1か月…。……ってかセンセイって、マジで真面目だな…」
真冬の目の前で颯人ががっくりと項垂れた。
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