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「そんな失恋ほやほやの拓也くんに、ハイ、どーぞ」
あたしはニカッと笑って、家に押し掛けて渡そうと思ってた、手作りチョコを拓也にさしだす。
「……うげっ」
彼は心底イヤそうな表情をしながら、ラッピングに包まれたそれを受け取る。
「貴重な義理チョコに、“うげっ”とはなによ」
「だってまた、あれだろ?千晴のトンデモチョコ」
「トンデモなんて、失礼ね」
だってそれが作戦だもん。
ただでさえ、あたしは“気安くしゃべれる幼なじみ”枠で、全然女の子として見てもらえないし。
みんなと同じじゃ、拓也の印象に残らない。
「いやいやいや!さばの味噌煮だのキムチだの明太子だの、トンデモ以外の何物でもねーだろ」
「全部拓也の好きな食べ物じゃん」
拓也のお母さんに、ちゃんとリサーチしてるんだからね。
「アツアツごはんと一緒に食いたいんであって、チョコに包んで欲しいワケじゃねえよ!」
「そんなにイヤなら食べなきゃいいのに」
「いや、食品ロスるのは地球に優しくないだろ……って、恨むぞ俺のもったいない精神!ガッデム!!」
頭を抱えた拓也に、あたしは明るく提案する。
「じゃあ、今年は何が入ってるか当ててみて」
「……どうか無事であれ、俺の胃袋」
「ほんと失礼よね」
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