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千晴の告白大作戦
義理チョコのお返しだからね、ってことでホワイトデー直前の休日、あたしは拓也と遊園地にやってきた。
妄想とはいえデートはデート。
久しぶりにスカートはいて、女の子らしい服装できめたあたしは、小走りで拓也に追いつく。
すると彼はあたしに右手をさしだした。
「……手ぇつなぐぞ」
「……え?」
「すぐどっか走っていくから」
「いつの話よ」
そう返したけど、ほんとは全部覚えてる。
ちっちゃい頃のあたしは、面白そうなものを見つけると、後先考えず走っていっちゃう子どもだった。
周りのみんなとはぐれて迷子になったことも数知れず。
「俺の記憶によれば、保育園から小3の冬くらいまでかな」
「……拓也ってば、もしかして粘着質?」
「それが恩人に対する言葉なのか?」
泣きべそかいてるあたしを、いつも拓也は見つけてくれて、手をつないで歩いてくれた。
「どうせなら、恋人つなぎにしとく?」
「するわけねえだろ。どっちかってーと、犬散歩させてる気分なんだから」
「じゃあ、この手はリード代わりなんだ」
「そだよ」
「そっか」
犬あつかいされたのに、ついついあたしはニマニマしながら、拓也の右手をぎゅっと握った。
……あー、ダメダメ。
幸せにひたりすぎると、“気安くしゃべれる幼なじみ”枠、ぶち壊す勇気がしぼみそう。
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