千晴の告白大作戦

1/4
前へ
/7ページ
次へ

千晴の告白大作戦

義理チョコのお返しだからね、ってことでホワイトデー直前の休日、あたしは拓也と遊園地にやってきた。 妄想とはいえデートはデート。 久しぶりにスカートはいて、女の子らしい服装できめたあたしは、小走りで拓也に追いつく。 すると彼はあたしに右手をさしだした。 「……手ぇつなぐぞ」 「……え?」 「すぐどっか走っていくから」 「いつの話よ」 そう返したけど、ほんとは全部覚えてる。 ちっちゃい頃のあたしは、面白そうなものを見つけると、後先考えず走っていっちゃう子どもだった。 周りのみんなとはぐれて迷子になったことも数知れず。 「俺の記憶によれば、保育園から小3の冬くらいまでかな」 「……拓也ってば、もしかして粘着質?」 「それが恩人に対する言葉なのか?」 泣きべそかいてるあたしを、いつも拓也は見つけてくれて、手をつないで歩いてくれた。 「どうせなら、恋人つなぎにしとく?」 「するわけねえだろ。どっちかってーと、犬散歩させてる気分なんだから」 「じゃあ、この手はリード代わりなんだ」 「そだよ」 「そっか」 犬あつかいされたのに、ついついあたしはニマニマしながら、拓也の右手をぎゅっと握った。 ……あー、ダメダメ。 幸せにひたりすぎると、“気安くしゃべれる幼なじみ”枠、ぶち壊す勇気がしぼみそう。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加