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「……なんで先言っちゃうかな」
ちょっと待って。
先言っちゃうかな、ってことは、まさか、そんな。
「……え?だって、拓也の好きな人って、永井さんだったんじゃ……」
「ああ、あれね。間違って呼び出されて手紙返したってとこ以外は、ウソ」
「……はぁ!?」
理解が追いつかなくて、あたしは思わず叫んでしまう。
「実は俺さ、他の子好きだって言う度に、千晴がしょっぱい顔すんの、大好きなんだよね」
……うおぉぉぉい!!
爽やかな笑顔で言う内容なの?それ。
「拓也さぁ、性格ちょっと歪んでない?」
「あはは……自分でもそう思う」
しれっと笑い飛ばしてから、拓也は言葉を継ぐ。
「千晴が誰を好きかくらい、わかるよ。だって俺、ずっと千晴のこと見てたから」
つまりそれは、あたしたち、両思いだったってこと?
「もー、早く言ってよぉ!」
「だって千晴が俺のことで悩んでんの眺めるって、最高じゃん」
「……うわ、最低」
「ごめんごめん。半分冗談」
「半分はマジってこと?」
拓也は照れくさそうに微笑んだ。
「もし好きだって伝えたら、今までの俺たちじゃいられなくなるだろ?それが怖くて二の足踏んでたんだよ」
なぁんだ、そっか。
あたしたち、おんなじ理由で告れなかったんだ。
「わかる。……あたしもおんなじだったから」
あたしの両手を握って、拓也は笑う。
「じゃあ、あらためて一緒に言うか。……せーのっ」
……あたしの告白大作戦は見事に(?)成功!
『好きです』
声を揃えて言ったその時から、あたしたちの関係は、“彼氏と彼女”になったのでした。
【おしまい】
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