第一話

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第一話

 翌日。月曜日。  もうすぐ春休みということもあって、授業は午前中に終わった。  学校から帰宅後は特になにもする事なく家でダラダラして、夜は母と2人で食事を取った。  それから千花と少しだけ通話し、いつも通りの時間に就寝した。  いい感じの深い眠りと浅い眠りを繰り返し、数時間後。  目を覚ますと、部屋が真っ暗だった。 「いま何時……っと」  俺は携帯を見る。   【3月20日火曜日 AM 4:12】  なんだ、まだこんな時間か。二度寝しよ。  携帯を枕元に置き、布団を被る。  ーーカランコロンカランッ  不意にリビングから、何かが落ちる音が聞こえた。  なんだろうこんな時間に。母が水でも飲んでいるのだろうか。 「まぁいいか」  何かが勝手に落ちたんだろう。大丈夫。変に気にすることはない。 「……」    目を瞑り、数分が経った。  さっきの音が、すごく気になる。  よく考えたら誰も居ないのに物が落ちるなんておかしい。  しかし耳をすましても足音が聞こえない。母がリビングから部屋に戻るらしき気配がない。そもそもリビングにいない?  なんだろう、誰かいるのかな。もしかして不法侵入とか?  そう考えると凄く怖い。。いやいや、考えすぎか。多分足音が聞こえなかっただけで、さっきまで母が居たのだろう。だけど、それにしても足音が無さすぎやしないか? この家ボロいし、リビングすぐそこだし、少しくらい何か聞こえてきてもおかしくないはずなんだけど……。もしかして誰もいないのに音が鳴った? そういう怪奇現象? いやいや、まさか。  心臓が強く脈打つ。耳の裏まで血管が浮いてきて、身体全体に血液が流れているのを感じる。興奮で頭が冴えているのに、体は恐怖で動かない。  ーーガチャッ、ギィィィィイ  不意に、閉まっていた自室の扉が開いた。  しかし、誰もいない。 「……」  部屋から見えたリビングは、豆電球で照らされていて。  けれど、やっぱり母の姿は無かった。 「大丈夫。何もない。大丈夫。大丈夫」  怪奇現象確定。まさかこの家に幽霊がいたとは。しかし、慌てない慌てない。不法侵入じゃなかっただけマシ。冷静に、冷静にいこう。ここで慌てたら、幽霊の思うツボだ。怖がってなんかやるもんか。  ビュオォォォォッ  開いた扉から風が吹いてきた。 「よしっ」  勝手に扉が開いたのは今日は風が強いからだと自分に言い聞かせ、俺は扉を閉めに行こうと腰を浮かせる。すると、  ーーピンポーン  不意に、家のチャイムが鳴った。  その音に、心臓が跳ね上がる。  こんな時間に誰だろう。気味が悪すぎる。  俺は立ち上がるのをやめて布団を深く被り、瞼を強く閉じた。  ……数秒経ったが、何もない。不思議なほどに、なにも。    こんな夜中にインターホンが鳴ったんだ。普段通りの母ならこんな時不機嫌そうな顔をしながら俺の部屋にやってきて、「もう、こんな時間に何かしら。ちょっとマナブ、玄関覗いてきてくれない?」とか言ってきてもおかしくない。  もしくは母なら自分で玄関を覗きに行くだろう。なんならドアを開けて、「こんな時間になにしにきたんじゃ!」と怒鳴りつけてもおかしくない。    しかし、なんの音もしない。  怖い。怖い。怖い。  体を丸めて布団に包まる。体温が高くなって、体から汗が噴き出してきた。手が震えて、体が震えて、呼吸がし辛くなって、もうどうしようもなくなった、その時。  ーーぐさっ。 「ぐあぁぁあっ」  突然、背中が焼けるような痛みに襲われた。  何が起きたのかは分からない。  ただ背中が、刺さるように痛いだけ。 「ぐふぅ、ひゅぅ、ぐひゅぅ」  呼吸がうまくできない。  痛みが身体の感覚を支配している。  苦しい、苦しい、苦しい、  苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい、、  もう無理、死ぬ。。
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