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第四話
目を覚ますと、部屋が真っ暗だった。
「ああああぁぁぁぁああぁ!!!」
激しい感情をぶつけるように俺は、思いっきり枕をぶん投げた。枕は鈍い音を立ててベランダの窓にぶつかり、落下する。
俺は狂ったように怒声を張り上げ、
「なんっなんだよこれ!! 意味がわかんねぇ!!」
背中の痛みが、まだ残っている。
あの痛みが、夢のわけない。
死ぬほどの苦痛を3回も味わって、殺されて、そしてなぜかまた生き返させられて。
これからあれを、あと何回繰り返せば良い? あと何回殺される? どうすれば終わるんだ?
考えれば考えるほど頭が痛くなる。
ストレスで身体が言う事を聞かない。
俺は机の上の物を全部床にぶちまけながら、また叫んだ。
「あぁもううんざりだ!! こんな事ならもういっそ、ほんとに殺してくれよ!! なぁ!!」
どさどさと音を立てながら、筆箱や鉛筆、ボールペン、宿題、教科書、ノートなどが床に散らばっていく。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ほんと、なんなんだよコレ。。
誰か、、助けてくれ……。
ーーカランコロンカランッ
また鳴った。もう聞きたくない。
どうせ次は扉が開く。
そしてチャイムが鳴る。鬼人が現れる。背中を刺されて殺される。
なんの抵抗もしなければ前回と同様、刺されて死ぬ。あぁもう本当にうんざりだ。
「死にたくない……」
もう死にたくない。
死にたくない。死にたくない。
死にたくない死にたくない死にたくないない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないない死にたくない死にたくない死にたくない、、
「うおぉぉぉぉ!!!!」
気がつけば扉を開き、玄関へ向かって走っていた。
部屋を飛び出してリビング中央の食事用テーブルを押し退け、途中で食器棚にぶつかって皿を割り、ガラスの破片を踏みながら、それでも一直線に走っていた。
玄関のドアまで、あと一歩。
もう少しで、ここから出られる。
ようやく、ようやくここから……。
玄関のドアノブに手をかけると、血の匂いがした。
……右に振り向くと、母が死んでいた。
「うわああぁぁぁぁぁ!!!!!」
ドアノブを掴んだ手が滑り、膝の力が抜けた。
ドンッ!
「くあっ」
あまりのショックに身体が脱力し、壁に頭をぶつけてしまった。
どうやら当たりどころが悪かったらしく、頭から血が出ているみたいだ。
何も考えられない。何も考えたくない。
こんな残酷な出来事を、直視できるはずがない。
ーーピンポーン
チャイムが鳴った。
家の向こう側、玄関横の窓には人影が見える。
そして亡くなった母の真横、キッチンの前から突然、鬼人が現れた。
何もないところから突然現れた鬼人は、血の付いた槍を手に持っている。
よく見ると倒れた母の腹部には、刺された跡があった。
「あぁ、あぁぁっ」
ふざけるな。俺が一体をしたって言うんだ。
今日だって普通に学校行って、勉強して、帰ってきて、
千花と通話してから、布団で寝てただけ。
なのに、なのに、なのに。
鬼人が突然現れて、3回も殺されて、しかも、既に母まで殺されていた。
たった1人の、大切な家族を。
……絶対に許せない。
「よくも……よくもよくもよくも……!」
燃え上がる強大な殺意を込めて、
俺は鬼人を睨みつける。
俺はどうなってもいい。
こいつは、こいつだけは。
絶対に殺してやる!!
「うおぉぉぉぉ!!!」
手に取った傘を武器に、勢いよく突き刺した。
正直こんな物で勝てるとは思わない。やけっぱちだ。
せめて一矢報いてやりた
「……えっ」
突き出した俺の、、
オレの、みぎうでが、、
「あぁ、ああぁぁっ」
スパッと無くなっていた。右の肩から先、全部。
「あぁっ、あぁぁ、うぅぅぅ」
どばどばと流れ落ちる、赤色の体液。
切り落とされた右手は宙を舞い、鮮やかな血飛沫を撒き散らしながら地面に落下する。
そんな気の遠くなる光景を前に俺は、膝から崩れ落ちていた。
「ふぅ、ひゅぅ、ふぅ、ふひゅぅ」
ふと、左手にコップが当たった。
あぁそういえば、母はよくここにしゃがんで水を飲んでいたな。。
「かあ、さん……」
コップが落ちる音が聞こえたと言うことはつまり、次にまた戻った時すぐにリビングへ行けば母がここで水を飲んでいるはず。
間に合うか分からない。
しかしもう一度、チャンスがあるのならば。
次こそは。
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