博物館の漬物

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博物館の漬物

「博物館の漬物を作ろうと思います。主に大英博物館をぬか漬けにすればいいと思いますが、とても買う予算がありません。ご近所のキャラメル博物館でも美味しい漬物はできますか?」 「はぁ?」 日本語は難しい。達者な学芸員でも聞き返す。 博物館「を」漬けたいのか、「で」漬けたいのかどっちだ。しかし主語から察するに彼は建物丸ごと漬ける気だ。 「お引き取り下さい」と喉まででかった。言えば違法行為になる。 時代がガラッと変わったのだ。「ゆる異世界」のせいで余計な仕事が増えた。 読んで字のごとく誰でも簡単に「異世界」が楽しめる。玩具程度に味わえる。 今から二年前の夏。召喚ゲートが開いてラノベの住人が東京を闊歩し始めた。 たちまち起こる大混乱。政府は王国使節と話し合い一定の歯止めを設けた。 日本のいかなる領域においても魔法は手品やパフォーマンスに準じて扱う。 つまり一切の魔法が無効化されるということだ。 それでは王国の経済活動に支障を来す。よろしい、戦争だ。 という強硬論が出たので日本政府は譲歩した。結界を張って隔離する。外部には結果を含めていかなる影響も及ぼしてはならないと法規制された。 魔導士の活動は演芸として認められる。 この妥協案にもかなりの不満が出た。その産物がゆる異世界だ。 結界の内側では誰もが魔法使いになれる。 王国の強い(圧倒的な軍事力を背景にした)要望で公共の福祉に反しない範囲でゆる異世界の自由が認められた。なので博物館側は断りにくい。 ドンとニワトコの枝がカウンターに置かれた。 黒マントの奧で男の眼が光っている。 「申し訳ございません」 私は乾いた唇をなめながら言葉を紡いだ。 ぬか漬けとは、木のかんや葉っぱなどを使って、食品を熟成させる作法のことを指します。ぬか漬けを作るためには、漬けるもの、漬ける場所、熟成させる時間が必要です。また、漬けるものや環境によっては、腐敗や病原菌が発生する可能性があるため、注意が必要です。 そのため、博物館の漬物を作ることは、とても難しいと思われます。また、博物館内での漬物作りは、博物館内の条例や法的規定によっても、許可されていないかもしれません。博物館での漬物作りを考える場合は、博物館の方針や規則を確認し、必要な手順を踏んでください。 ましてや、ご近所のキャラメル博物館で漬物を作ることも、同様に難しいと思われます。 私は丁寧に説明した。キャラ博が都営だからと言って規制は緩まないだろう。 「それじゃあ、大英博物館をぬか漬けにすることは無理ってことですか?」 男は落胆していました。 しかし、この男が諦めるはずはありませんでした。 「いや、まだだ」 彼はそう言うと、ポケットから一通の手紙を取り出しました。そして、その手紙を開きました。 そこには、「大英博物館をぬか漬けにするな!」という文字が書かれています。 「これは、とある人物からの忠告である。『大英博物館をぬか漬けにしてもいい』という内容ではないのだ。しかし忠告は勧告にして通告ではないであるからしてつまり、大英博物館を漬けても大丈夫だという証拠なのだ。私はこれを手がかりに、大英博物館をぬか漬けにしようと思う」 「国際魔法技術庁?!」 私はのけぞった。両世界の諮問機関。キングオブ権威には逆らえない。 「よいな?」 彼はそう言って、再びポケットに手を入れました。すると、今度は小さな袋が出てきました。その中には、何種類もの豆のようなものが入っているようでした。 「これがヒントになるかもしれない」
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