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(んで、このカードどうしよっかな……(あいつ)と違って合鍵もねぇから、こっそり返しといたりできねぇし)  考えていると、背後で聞き慣れた声がした。 「ケンちゃん?」  振り向くと、数メートル先にばあちゃんが立っていた。いつもの部屋着より少しきれいめな服を着て、ハンドバッグを提げている。 「ばあちゃん……」 (なんで……今日はデイサービスで夕方まで帰らないはずじゃ……?)  ばあちゃんは、うろたえる俺ににっこり笑った。 「ひまわりね、明日の午後だったのに、ばあちゃん勘違いしてたみたいなの」 「そう……なんだ」 「いやだねぇ、うっかりしちゃって」  細めたばあちゃんの目が、俺の手を見ている。そこにあるキャッシュカードにハッとした俺に、ばあちゃんは信じられないことを言った。 「健太郎からとり戻してくれたの? ありがとうね」 「……え?」  驚いて顔を上げる。ばあちゃんは、いつもの笑顔を俺に向けていた。 「暑いから、とりあえず家に入りましょうよ、ケンちゃん」
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