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 ガキの頃から優等生だったんだろう。ケンカどころか、人に怒鳴られたこともないのかもしれない。すっかり怯えて泣きそうな「ケンちゃん」に、俺はため息をついた。 「お前のばあちゃん、もう八十過ぎだろ? どうせあと何年かしたら死んじまうのにさ、大好きな孫に(かね)盗まれてたなんて、可哀想すぎんだろ」  苛立ちがふつふつと湧いてくる。  この男の事情など知らない。就職で失敗したのか、会社に馴染めずに病んだのか。けど、あんなに大切に思ってくれるばあちゃんがいながら、それをカモにするような男はクズだ。 「失せろ、今度やったらブッ殺す」  襟首をつかんで門扉の外に引き出すと、「ケンちゃん」はよろけて尻餅をつき、あたふたと逃げていった。
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