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新歓式当日
「お母さん、おはよう」
「おはよう。ちゃんと寝たの?」
「うん、ばっちり」
「なら良いけど。昨夜遅くまで部屋の電気ついてたみたいだから気になったのよ。ご飯ちゃんと食べて行きなさいね」
「はーい」
少しおどけて返事をすると、冷蔵庫からマーガリンとブルーベリージャムを取り出した。食パンにマーガリンを軽く塗ってトースターで加熱すると、じゅわじゅわと鼻をくすぐる香ばしい香りが漂いはじめる。
カップスープにお湯を注いでスプーンでくるくると混ぜ溶かし、「いただきます」と口を開けた瞬間、にこにこと見つめられているのに気がついた。
「……ねぇ、見られてると食べづらいんだけど。顔ならちゃんと洗ったよ」
「あら、ごめんなさいね。朱袮が髪結んでるの久しぶりだから。私に似て顔が小さいから、ポニーテール似合って可愛いわよ」
サク、と食パンをかじる。カリカリになった耳の部分はラスクのようで、追いマーガリンとジャムが染みて甘みがじわじわと広がっていく。
「だって今日、新歓式の挨拶があるから。下ろしてるのもなんだし……」
「あ、そうだ。おまじない教えてあげるわ」
「おまじない?」
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