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袖を通した真新しいセーラー服。リボンの位置が決まるまで何度も鏡とにらめっこした。ポニーテールを揺らして門をくぐった入学式から、もう二年が経った。
ここ、都内での桜が咲き競うピークは、一般に春分の日前後と言われている。通学路の途中にある大きなソメイヨシノは完全に葉桜になってしまった。黄色みがかった若葉と青々とした葉とがさわさわと踊り、枝に残る桃茶色の軸がときおり吹く風に揺られている。少しだけ早起きした四月の朝の空気は穏やかで、まだちょっぴり冷たい。
――大丈夫よ。昨夜、何度も原稿を見直したし、何回も、何回も練習したんだもの。第一、怖気づくなんて私らしくない。木々の隙間を縫う細くてやわらかい太陽の光も、アスファルトを強く照らす光もきっとエールを送ってくれている。
握った拳にぐっと力を込めてから一歩踏み出すと、地面の硬さがそのまま返ってくる。三年生になって新調して貰ったばかりのローファーは下ろしてから八日目で、まだまだ足に馴染みつつある段階。
抜けるようなスカイブルーを見上げると、澄んだ色に後押しされるように足取りも自然と軽くなっていく。ポニーテールは、自分に気合を入れる時の定番ヘアスタイルである。
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