ひらり、花駆ける

バタバタの休み時間

「はい。お願いします」
「お預かりします。ごめんね、練習に行くところだったのに。貴重な時間を使わせちゃって」

　預かった原稿をクリアファイルに入れ、お詫びを入れた。高階さんの顔の動きと同時に毛先も軽やかに揺れ動いている。

「ううん、バッタリ逢えてよかった。冨田さんも挨拶頑張って。じゃあ、基礎練行ってくるね」

　ひらひらと手を振ると、高階さんはパタパタと廊下を駆けていった。

　他のクラスにも寄って、無事に何枚かの原稿を回収できた。チェックをつけたリストに視線を落とすと、残っている中からダンス部が目に留まる。

　部長は７組の香月(こうづき)瑛奈(えな)ちゃん。去年同じクラスだったから顔はもちろん分かるし、雑談もするくらいに仲は良い。向上心が高くて練習が好きな子だから、いない確率の方が高い気もするけれど。どうかいますように。