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「失礼しまーす……」
カラカラと引き戸を開けると、窓際の中ほどにいたレイヤーウルフヘアが目に飛び込んでくる。
「瑛奈ちゃーん」
口元に左手を当てて名前を呼ぶ。私を認めると、「あ、部活動紹介の原稿ー?」と同じように左手を当てて返してくれた。うんうんと頷くと、人差し指と親指を丸めてみせ、用紙を手に美人顔が駆け寄ってくる。
ぱっと目を引く短めに揃えられた前髪と、大きな猫目。スレンダー体型なのは日ごろの練習の賜物だと思う。
「はい、お願いします」
「ありがと。お預かりします」
受け取ったものをクリアファイルにしっかりと挟みこんだ。
「ダンス部、新歓式で演技するよね。練習大変でしょ?」
「そうなの。かなりハード。春休み中もほとんど学校来てたもん。おかげでチアのリフト、かなりいい感じに仕上がってるんだ。当日楽しみにしてて」
「うん、しっかり見届けるね」
「朱袮ちゃんもね。頑張れ」
お互いにガッツポーズを送り合いながら教室を出ると、ちょうど隣の教室から出てきた関くんの姿が見えた。
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