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「関くん」
呼びかけると、“あ”の形に小さく口が開く。
「どう? 回収率」
「まぁまぁ、かな。今は空振りだったけど」
「私もまぁまぁ」
何となく遠巻きに見られているような気がしてそっと視線をずらすと、何人かの女の子が口元に手を当ててひそひそ話をしている。
「あ〜、今日もやばいカッコイイ……」
「話してるのレアじゃない?」
耳をそばだてて拾った内容と、早穂が話していたこととが合致した。なるほど……と一人納得していると、「どうかした?」とわずかに顔を傾けられた。前髪がサラリと流れて、隙間から片目がちらりとのぞく。
「……!」
私が息を呑んだのと、周りから黄色い悲鳴が上がったのはほぼ同時だった。筆をシュッと走らせたような幅のある切れ長の目。焦げ茶色の瞳が窓から射し込む光に柔らかく照らされていた。
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