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新学年、新学期の日
「始業式のあとのテストって、なかなかの強硬日程だと思わない? しかも校長先生の話は長いしさ。半分も内容残ってないよ」
「そんなこと言ったって、国数英の三教科だけじゃない。春休みの課題からだし、ワークの答え丸写ししてない限り大丈夫だよ。早穂のことだから何回も解いてるんでしょ」
「さすが朱袮。私のこと分かってる」
「だってほら、私たちの仲も三年目ですし」
机を向かい合わせに動かしながら、ぷっくっくと二人で笑い合う。一学年7クラス、しかも毎年クラス替えがあるのにも関わらず、奇跡か偶然か、三年間同じクラスになった。
手塚早穂と冨田朱袮で名簿が前後の関係。仲良くなるのに時間はかからなかった。
「でもさ、一年生はテストじゃなくて入学式だからいいよねぇ」
鞄からお弁当を取り出し机の上に置くと、早穂が同意を求めるように視線を寄越した。
「んー。その代わり、週明けにテストでしょ」
「土日に勉強の時間確保できるじゃん」
「たまたま今年がそういうカレンダーなだけだよ。ほら、食べ終わったら問題出し合お」
マトリョーシカの絵柄の二段重ねのお弁当箱を開けると、お母さんの作ってくれたふわふわの玉子焼きが目に飛び込んでくる。
『明日テストだからちょっと甘めに作ってね』とリクエストをしたことを思い出しながら、「いただきます」と手を合わせる。口に運ぶと、砂糖とみりんで調節しているという絶妙な甘さがほろりと広がっていった。
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