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「はい、皆さんお疲れさまでした。答案の返却は週明けの予定です。お楽しみにね」
記憶と時間との戦いは終わり、あっという間にホームルームになった。担任の沖坂先生はにっこりと笑顔を浮かべながらも否応なしに現実を突きつける。
「ええー、やだぁー」
「うげぇ」
「まだいいよぉ〜」
労いの言葉は霞みの如く消え去り、お約束のように悲鳴とも絶叫ともつかない声が連鎖した。
「はいはい、ちょっと静かにね」
パンパン、と手を叩いて場を鎮めると、教卓の縁に手をかけて少し前のめりになる。ライトベージュのノーカラースーツにクラス中の視線が集まった。
胸元には、花束を模した流線型デザインのシルバーのブローチが光っている。あしらわれたパールも一粒ながら存在感は抜群だ。
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