新学年、新学期の日

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「えっ」  早穂はまん丸く目を見開いて机に腕を乗せ、身を乗り出している。 「本気?」 「だって、代表挨拶だけでしょ?」 「たしかに沖坂先生、そう言ってたけど……。でも大変じゃない?」 「まぁ、大変って言ってもこの一週間だけだし」  私が座っている位置は丁度、真ん中の列の一番うしろの席だ。ちらりと視線を動かせば教室内の様子がよく見える。数人で顔を寄せ合い話し合うも頭を横に振る者、目線をじっと下に向けて、ただ時が過ぎるのを待つ者、果てには頰杖をついて窓の外を眺めている者もいる。これでは決まるものも決まらない。 「先生っ、私やります!」  勢いよく手を挙げると、教室内のざわつきがぴたりと止んだ。同時に、隣の席からも、あっちの席にこっちの席からも、ちらちらと視線が向けられる。別に早く帰りたがっているみんなの気持ちを代弁したわけではないし、そんなに珍しいことをしたつもりもない。  何となく首元を人差し指で掻いていると、沖坂先生の表情が一瞬だけホッと緩んだように見えた。
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