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1組の関くん
箸をせっせと運んでお弁当をお腹に収めると、携帯マグに入れたウーロン茶を飲んでふうっとひと息つく。壁にかけられた時計を見上げると、針は十二時二十五分を示している。
「やば、五分前。視聴覚室行ってくるね」
慌てて片付けを済ませると、「うん、いってらっしゃい」と手をひらひらと振って送り出された。あのあと沖坂先生から、「冨田さん、そしたら明日の昼休み、十二時半に視聴覚室に行ってくれる? 集まって挨拶する人を決めるから」と伝えられていたのだ。
よくよく考えたら視聴覚室は教室を出てすぐの場所にあるのだけれど。急いで食べたせいで若干苦しいお腹をさすりつつ廊下を進む。ガラリと引き戸を開けると、入口付近の机に何人かが集まっていた。
「……新歓式の代表挨拶の希望者の方ですか?」
背中のなかほどまである真っ直ぐな黒髪の、涼しげな目元をした子がサッと視線を寄越す。眼鏡のフレームはオレンジでかわいらしいポップな色なのに、どこか淡々とした印象を受けた。
「あっ、はい。2組の冨田です」
「2組さん……、と。あとは1組の方ですね。まだ時間になってないので、もう少し待ってて下さい」
手元のバインダーに挟んだ用紙にチェックをつけると、シャーペンをホルダーにカチっと差している。集まった中には知った顔はいない。手持ち無沙汰に視線を宙に彷徨わせていると、静かに扉が開く音がした。
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