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「……すみません、遅くなりました」
低い声と共に伏し目がちに入ってきた彼は長めの前髪で目元が隠れているものの、立ち姿はすっと背すじが伸びてすらりとしており背が高い。雰囲気でなんとなく、立候補したクチではないなと思った。
「少し早いですが、みなさん集まったようなので始めます。生徒会長の冴島が来る予定でしたが用事が立て込んでいて来られないので、『よろしくね〜』と代理を任されました、3−3の山乃実鈴です。冴島から伝言を預かっているので、早速読み上げます」
山乃さんは冴島くんの声色を真似るわけでもなく、表情を変えずにやはり淡々と説明をする。そしてバインダーに挟んでいたルーズリーフを取り出すと、顔の前に持ってきて読み始めた。
「――立候補してくれた方、または推薦を受けて下さった方、集まってくれてありがとうございます。さて、新歓式の代表挨拶の件ですが、恨みっこなしで公平にじゃんけんで決めましょう。ちなみに勝った方にお願いをするつもりでいます。では、最初はグーから始めて下さい。……とのことです」
(え、じゃんけん……?)
戸惑いを覚えたのは私だけではないみたいで、集まった他の人達もちらちらと目配せをしている。
「それでは、最初はグー」
山乃さんの合図に、慌てながらも七つの拳がぐるりと並ぶ。
「じゃんけん、ぽんっ」
反射的に七つの声がぴたりと重なった。
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