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「ばぁば、つぎいつくるかな?」
「んー……どうだろうね」
母が困ったように言う。
「パパは、いつかえってくるかな?」
私の胸もドキリと鳴って、母と一緒に黙り込みそうになる。
そのとき、みおちゃんママの言葉を思い出す。
離婚してもどうなっても、聡一の父親であることにかわりはないのだと。
私は聡一のもとへ行き、ギュッと抱きしめる。
「パパに次会ったら、どこに行くか考えておこっか」
「うん!」
今はこんなに近くにいる聡一も、いつかは遠くへ行ってしまう。
成長すればするほど、距離はどんどん離れていく。
私と正樹もきっとそうだった。
幸せな暮らしの中で、どんどん心の距離が離れていった。
華絵と圭吾もそうだったのだろう。
一度は愛し合っていった2人も、お金や誘惑に惑わされ、次第に埋められない溝ができたのだ。
だからこそ思う。
この子の心は、せめてこの子が大人になるまで、私がずっとそばで守ってあげられますように。
つけられてしまった心の傷も、いつかきれいに治りますように。
そして、素敵な人との愛で、新しい思い出を作れますように。
そのときは、私のようにならないでほしいな。
ちかくて、とおいあなたへ。
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