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今までのように、抱きしめてキスをして、手を繋いでいてくれるならそれだけで充分だと――そんな乙女みたいなこと、言えるはずがない。
(千歳さんが初めての相手ってだけでも充分……贅沢だし、記憶に残らないとか絶対にないのに)
毎晩、体の隅々まで愛していると言わんばかりに体をくっつけ愛撫しているのだ。事務的にことを済ませているとは到底思えない。これが記憶に残らないはずがなかった。
なら、本番はあれ以上の記憶が待っているのだろうか。
(ああもう……どうにでもなって……)
千歳がすると言ったのだから、別荘でするのだろう。
それが終われば、このむせてしまうほど甘い恋人関係も終わるのだ。
恋人になってから一週間も経っていない。案外、短かったと思いながら唯はまだ繋いだままの手を見つめる。
(そろそろ、夕飯の準備をしないといけないのに)
離したくないと思っている。そんな自分がいることに、唯は不安になった。
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