第3章 この人が欲しい(6)

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 唯も読書はするが、千歳の読んでいる本と同じレベルのものは読めそうにない。様々な分野の専門書を読んでいるのは、ここ数日で確認していた。勉強というよりは、好奇心を満たすための読書なのだろう。タイトルを見ても会社とは何の関係もなさそうなものが多かった。 「でも、明日は唯がいるので……二人でできることをしたいですね」  まっすぐに見つめてくる視線に、唯はたじろぐ。 「明日は何時に出ますか」 「そうですね……あんまり具体的に何時かは決めてなかったです。お互い起きて、用意ができてからで」 「分かりました」  突発的に決まった旅行のようなものだから、細かい予定を決めることはなかった。唯は秘書として千歳の予定を整理する時は、これでもかと時間を厳しく計算していたから流れに身を任せるような日程は新鮮だった。 「じゃあ、私はこれで……」 「寝ますか?」 「はい。でも、今日はもう一緒に寝なくてもいいですよね」 「そうですか?」 「だってもう……色々と充分じゃないですか」
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