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さすがにまずいことは唯も分かっている。薬があるとはいえ、いつも以上に疲労感が溜まりやすい。この状況で副社長の秘書として働き続けていれば、薬を飲み忘れなくてもいつかは倒れることになりそうだった。
病院を出ると、深い溜め息が零れる。
溜め息を吐きたいのは、長年担当してくれる医師の方だろう。
(こうなったら、一矢くんに話をしないと)
恋人の深川一矢は唯が処女であることを知らない。二歳年下の彼は天真爛漫で、唯の内側にすんなりと入ってきた。特別、ドキドキすることはないが一矢と過ごすのは心地がいい。そう思っていたら、付き合おうと言われて唯は頷いたのだ。
しかし、唯は付き合おうと同意したものの仕事が忙しかった。時々、デートはするが泊まりはない。お家デートもしたが、唯が料理を作って食べてレンタルした映画を観るだけ。肉体的な接触は手を繋ぐまでしかなく、ひたすら健全だった。中学生の交際よりも進んでいないのではないだろうか。
最初は恋愛経験が皆無だったので、そういう恋愛もあるのだろうと思うことにした。
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