第3章 この人が欲しい(6)

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 唯は昨晩のことを思い返す。しかし一日経って冷静になったとしても、千歳とやりたくないなどとは思えなかった。痛みは怖いが、体を触れあわせるだけの夜を一日増やしたところで痛みが和らぐとは思えない。ただ、もう彼とする覚悟はできている。それなら、触れる時間を増やす必要もない。  ──というより、自信がなかった。  一日冷静になる時間がなければ、明日、唯は千歳に本気になってしまいそうだった。  養子とはいえ、千歳が御曹司であることに変わりはない。一週間近く、彼との環境の差をこれでもかと知ったのだ。  唯の立ち位置は千歳の隣ではなく、後方。  それが正しい。  千歳は唯をこれ以上ないほど女性扱いしてくれるが、それだけだった。  恋心を抱けば、苦しくてたまらない日々が待っている。  ならば最初から千歳の提案を断るべきだったのだが、その時は二年近くそばにいたのだから大丈夫だと慢心していたのだ。  恋人扱いされることが、こんなにも心を乱されるとは思わなかった。 (好きになりたくない……)
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