第1章 副社長と契約恋愛(1)

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 不安にはなったが、この間結婚しようとプロポーズまでされたのだ。二人で映画を見終えた後に突然言われたことには驚いたが、結婚関連に対する憧れがない唯は「一矢くんらしい」と思うだけだった。 (この時間なら、一矢くんは家にいるかな)  これからのことを二人で話した時に、お互い合い鍵を渡したことを思い出す。病院からちょうど近い場所に一矢が住むアパートがあるので事前に電話をするほどでもないだろう。いなかったらいなかったで、その時に電話をかければいい。  唯はそう考えて、一矢のアパートに入った。  鍵を使ったのは初めてだ。  緊張しながら戸を開けると、見慣れない靴があった。思わず部屋を間違えてしまっただろうかと部屋番号を確認する。  だが、一矢からもらった部屋の鍵で開いたのだから間違いはない。  嫌な予感はしたが、まだそうと決まったわけではなかった。  唯は明らかに女物のハイヒールのパンプスから視線を外し、できるだけ物音を立てずに家の奥へ入る。
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