第4章 終わりの日(2)

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 いつの間に、家に届けさせていたのだろう。会計中、すこし離れていて時間がかかっていることは知っていた。まさかこんなことをしていたとは、と呆れればいいのか素直に喜べばいいのか。 「……欲しいです」  ここまでされて、突っぱねられるはずがない。食べたくても諦めたケーキがあるのだ。 「じゃあこれは、明日の楽しみですね」 「そうですね」 (明日の、楽しみ)  そんなこと、唯は考えなかった。  今日で楽しい時間は終わるのだとばかり思っていたのだ。  用意されたささやかな楽しみは、千歳が丁寧に箱を閉じて冷蔵庫に戻した。  最後だからと千歳は一緒に入浴をするかどうか聞いてきたが、唯は勢いよく首を横に振った。明るい場所で素肌を晒す余裕はない。千歳も本気で言ったわけではないので、唯のその反応を見て笑いながら「分かりました」と答えた。
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