250人が本棚に入れています
本棚に追加
いつの間に、家に届けさせていたのだろう。会計中、すこし離れていて時間がかかっていることは知っていた。まさかこんなことをしていたとは、と呆れればいいのか素直に喜べばいいのか。
「……欲しいです」
ここまでされて、突っぱねられるはずがない。食べたくても諦めたケーキがあるのだ。
「じゃあこれは、明日の楽しみですね」
「そうですね」
(明日の、楽しみ)
そんなこと、唯は考えなかった。
今日で楽しい時間は終わるのだとばかり思っていたのだ。
用意されたささやかな楽しみは、千歳が丁寧に箱を閉じて冷蔵庫に戻した。
最後だからと千歳は一緒に入浴をするかどうか聞いてきたが、唯は勢いよく首を横に振った。明るい場所で素肌を晒す余裕はない。千歳も本気で言ったわけではないので、唯のその反応を見て笑いながら「分かりました」と答えた。
最初のコメントを投稿しよう!