第4章 終わりの日(2)

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 元の生活に戻ることに支障はないはずだが、しばらくはぎこちないかもしれない。一日だけならば、非日常の世界で済むのだが一週間近く続くと非日常ではなく日常として受け入れてしまうのか。  脱衣所にあるクローゼットに、唯が着てもいいように用意された服が何着と並んでいるのを見ても驚かなくなったのは……まあ、そういうことだろう。  人に見せるには恥ずかしいけれど、唯が可愛いと思う部屋着が並んでいる。 (どうせ、今日が最後なんだし……)  まっとうに可愛い服を着ようか。ちゃんと恋人らしい格好といえば、どれだろう。マンションでは、一番飾り気がないワンピースを選んだが唯は別の服を取ることにした。 (何着ても、千歳さんが動揺することないんだし……いっそ、気楽かも)  期待されていない。  でも、それでいいと唯は思う。  だからこそ反応が欲しいなんて希望を持つことなく、見て欲しい姿を選べるのだ。
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