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第4章 終わりの日(3)
「千歳さん、お風呂上がりました」
「もっとゆっくり入っていても良かったのに」
千歳の瞳が唯に向く。そのまま、じっと彼女を見つめた。
唯は白いナイトドレスを身に着けていた。可憐で柔らかい雰囲気の服は、すこし身動いだだけでスカートの裾が涼しげに揺れる。肩紐はリボン結びされており、胸と裾はまるで花弁のようなフリルがついていた。
「充分入りました……よ……」
じっと見つめてくる視線を、唯はどう受け止めていいか戸惑った。
こういう時、千歳は気にもしないか、恋人らしい褒め言葉をくれるかのどちらかだ。何も言わず、まじまじと服装を見てくることなんてなかった。
(似合ってなかったのかも……)
やっぱり着替えようか。
唯は自身の格好を見下ろし、悲しくなる。胸元がかなり開いていた。用意された服ではあったが、千歳が好んでいるとは限らない。品がない、と内心思われたらどうしよう。
「私、先に寝室にいますね」
無関心でいてくれたなら良かったのに、と唯は視線から逃げるように背を向ける。
「唯、待ってください」
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