第4章 終わりの日(3)

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 千歳がリビングを出たのを耳で確認した後、唯は振り返る。そこには誰もいないけれど、どんな顔をしてそばで立っていたのだろうかと想像した。  寝室に入った唯は、その光景に思わず後ずさりした。  部屋全体はベージュ系の落ち着いた雰囲気の壁や床、照明は柔らかい光を放っている。  マンションにあるベッドよりも大きなベッドがあることはいい。元から、そうだろうなと想像はついていた。  けれど、サイドテーブルには何本かミネラルウォーターやスポーツドリンクが用意されている。寝室ではなく、トレーニングルームにでも入ったかと思った。 (いやでも……今までも、千歳さんに触られていると喉、乾いたなって思うことあったし……)  準備するに超したことはない。ないのだが、用意が本気すぎる。  これが千歳以外の一般人男性であれば、やる気がすごいとすこし引くだけに終わるのだが千歳である。爽やかで上品で、欲情している姿など見たことがないし、想像することすらできない。そんな男性の寝室にミネラルウォーターとスポーツドリンクが用意されている。 (痛いの我慢する時とか、だいたい冷や汗出るから……うん……)
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