第4章 終わりの日(3)

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 こんな独占欲を持つなんて、付き合う前は考えられなかった。いつからこんなに欲深くなってしまったのだろう。そう思いながら、チェアの上で三角座りをして軽く目を閉じた。  ──千歳さんを好きになりたくない。  ──御曹司となんて、苦労するのは目に見えている。  ──それに、そもそも千歳さんが私を好きになることなんてない。  ──けれどそれは、本当にそうだっただろうか?  唯の中で上書きされていた記録が、ぺらりとめくれて落ちそうになる。  唯が秘書になってから、千歳が初めて風邪を引いた日。それでも仕事をしようとする千歳を、社長に報告してマンションに連れ帰った。珍しく弱っている千歳が心配で、看病していると彼は──  ──唯に、キスしようとする素振りがあった。
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