第4章 終わりの日(4)

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 両手で千歳の頬に触れる。嬉しそうに目尻を細める姿を見て、唯は衝動的に彼の頭を引き寄せた。 「ふ……」  抵抗なく近づいた顔に、今度は唯から唇を重ねる。 (離れたくない)  触れれば触れるほど、気持ちは満たされていく。それなのに、悲鳴のような鋭い痛みが唯に襲いかかった。  頬に触れていた手を、そっと背中へ移動させる。縋りつくように強く抱きしめると、千歳は唯を安心させるように頭を撫でた。 「もうすこし、ですからね」  近いうちに来るであろう痛みのことを考えると、唯はやはり冷静ではいられなくなる。自分でも情けないとは思っているのだが、こればかりは克服できそうになかった。 (とても面倒くさいと思うはずなのに……)  最後すら優しいのか、と唯は何とも言えない気持ちになる。いいことだけれど、悲しいことでもあった。  千歳はもう一度、唇が溶けるような甘いキスをすると、唯の体を隅々まで触れていった。すでに唯の感じる箇所など知っている指先は、敏感なところをすりすりと撫でる。その瞬間だけ、唯は痛みへの恐怖を忘れることができた。 「今日は寝落ちしたら、だめですからね」
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