第4章 終わりの日(5)

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 それは千歳をこれ以上ないほど、傷つける言葉だった。  彼の笑みは抜け落ちて、今にも壊れてしまいそうだった。 「……どうしてそんな顔をするんですか。そんなに好きなら、千歳さんがすればいいじゃないですか」 「だって、唯は俺が手を伸ばしたら逃げてしまうから」 「逃げるって……」 「好意を伝えようとした途端、急いで恋人を作ったじゃないですか」  だからずっと隠していたのだ。直接的な言葉は言わず、恋人役を演じ続けた。  唯は千歳に好かれていると分かっていたら、絶対に断っているから。  けれど、今日まで自身の欲を表に出さずに恋人のふりをするなんて、普通できるだろうか。  今までどんな気持ちで唯に触れていたのだろう。  唯は想像すると、胸が苦しくて息が止まりそうになる。  ずっと、平気だと思っていた。  千歳は誰かに何を言われても、馬鹿にされても、穏やかなまま笑みを崩すことはなかった。  彼と平等な立ち位置の人なんて、片手で数えるくらいだ。唯はその中に入っているはずがないからと甘えていた。  知らないうちにどれほど傷つけたのだろう。  恋人ができたと話した時、千歳は笑顔で祝ってくれた。
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