第4章 終わりの日(5)

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 千歳がお見合いをすると話した時、唯が頑張って調べようとすると、千歳はそんなに頑張らなくていいと笑っていた。  結婚する予定だと話した時、千歳はやっぱり笑顔で祝ってくれた。  結婚しても仕事は続けると話した時、千歳は嬉しそうで――  ――それを思い出した唯は、心底後悔した。  千歳の隣に立つ未来なんて、一度だって考えなかった自分を。 「好き。好きです」  唯は秘書という立場に満足していた。それが壊れてしまうと思うと、怖くなって全力で逃げたのだ。 「千歳さんのことが好き」  声に出したら認めてしまうから、出したくなかった。  伝えたのはこれ以上、彼を傷つけたくなかったからだ。 「どんなに痛くても、千歳さんがいいです」  それくらいなら、いっそ自分が傷つく方がよっぽどいい。  だけど、それも勝手な気がした。  唯は掴んでいたバイブから手を離す。 「でも、千歳さんが楽になるなら」  好きだという感情を全部、唯の中に残してしまえばいい。  もうたくさん、守ってもらえたのだ。 「そのまま、押し込んでください」  許されなくていい。
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