232人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
第4章 終わりの日(6)
別荘の外でパラパラと何かがぶつかる音がした。昼間はあれほど天気が良かったのに、雨が降り始めている。冷たいのに、どこか優しさを孕んだ雨音。
覚悟を決めて待っていた唯は、まだだろうかとビクビクしていた。股の間にピタリと当てられたバイブはそのままだ。もしや自分から腰を寄せた方がいいだろうか。
(千歳さん、優しいから……)
もちろん優しいだけではなく、相手のためにすこし……いや、かなりスパルタな面もあるが。
「俺は唯が欲張りになって欲しいのに」
「……もう充分、欲張りだと思うんですけど」
「足りないです」
唯にとっては、この状況自体が贅沢である。
「もっと欲張って」
いいのだろうか。これ以上を望んでも、迷惑ではないだろうか。
唯はそっと視線を持ち上げる。その視界にしっかりと千歳を収めた。
くっきりとした目鼻立ち、薄い唇は笑みの形を作っている。けれど頬も耳も赤く、額には薄らと汗が浮き出ていた。そして瞳は向けられた人を蕩けさせるほどの熱を帯びて、求められているのが伝わってくる。
今まで唯は必要とされることが嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!