第4章 終わりの日(6)

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 唯はこれでようやく、ちゃんと千歳を満足させることができる。うっかり下腹部に力が入っても、千切れる寸前のような感覚はない。かわりに繋がっている部分は酷く泥濘み、全身が火照る。僅かに身動ぐと、はちみつのような粘稠した音が鳴った。 「唯」  たった二文字、千歳は大切に、確かめるように言う。  唯は体も心も今、しっかりと結ばれたのだと実感した。  顔を寄せる千歳の唇に、唯は自ら合わせる。ほんの数秒も待てないくらい、もっと近くにいたいという欲を隠す必要はなかった。  唇を合わせたまま、千歳は唯をしっかりと抱きしめなおすと腰を動かし始める。そこに勢いはなく、唯に負担がかからないように小刻みに最奥を突いていくのみだった。重ねた唇の隙間からは、途切れ途切れに唯の甘い声が漏れる。嬌声を隠したいわけではないけれど、唯は彼の唇を吸っていたいので我慢していた。
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