第5章 全部あげたい(1)

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第5章 全部あげたい(1)

 その夜、唯は千歳に求められるまま、最後まで受け入れた。途中から何をされても気持ちよくなり、ナイトドレスの紐が解けた状態になっていることも気づくことはない。部屋の中が見えやすくなったとぼんやり思いながら腰を動かした頃には、すっかり朝を迎えていた。  千歳は一応、そろそろ寝るかどうか聞いた。けれど千歳に溺れきった唯は「はい……」と言いながらも千歳を離さず腰を振っていた。そんな淫らで可愛い姿を見ていたくなった千歳は、翌朝可哀想なことになると分かっていても甘やかすことにした。唯が本心を話してくれるまで、千歳はあえて彼女を突き放すような発言を何度かしたのだ。  旅行に行く前日なんて秘書であることに満足する唯に、千歳はあえて辞めたって構わないという態度を見せた。酷いことをした自覚はある。それでも、秘書であることに縋り続けてしまったら千歳の望む関係は遠のいたままだっただろう。
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