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行為が終わったのは、千歳が「もう大丈夫ですよ」と伝えてからだった。唯はふにゃふにゃ笑って即寝入った。疲れただろうに幸せそうな表情で千歳に引っ付いて眠る姿は今まで見た中で一番無防備だ。それだけ遠慮がなくなったということだろう。
千歳もすこしだけ眠って、朝の十時に目を覚ます。このまま彼女の寝顔を見つめていたい欲求に駆られながらも、彼はそっとベッドから出た。唯が風邪を引かないようにしっかりと布団をかけなおし、物音を立てないように歩いてウッドデッキに向かう。
外はすっかり晴れていたが、深夜に雨が降っていたので、草木はしっとりとしていた。心地の良い澄んだ空気を吸い込み、持ってきたスマホに目を落とす。
「休暇中くらい、ゆっくりさせて欲しいのに……」
何件も着信が届いている。メッセージもあり、どうして返事が来ないのかと、来ないなら別荘に行くぞと書かれている。全部同じ人物だ。
それらをのんびりと眺めていると、タイミング良く着信が来る。
久我達也と書かれた画面を見つめ、千歳は一呼吸置いてから通話に出た。
「どうかしましたか」
「うわっ。やっと出た」
「休暇中ですけど」
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