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第5章 全部あげたい(2)
唯は全身が重たかった。手も足も重いし、瞼も重い。窓の外からは鳥の鳴き声が聞こえており、寝室も明るかった。朝はとっくにすぎているはずだと焦って、どうにか起きようともがく。
(起きたいのに……)
時間的には、充分な睡眠がとれたはずだ。それなのに、どこもかしこも鉛のようになっており、起き上がろうとすればベッドに沈没してしまう。体が重い以外にも、痛みもあった。腹部は鈍い痛みがあり、足はやや筋肉痛。針を刺すような鋭い痛みではないのなら、唯は何とか耐えられる。
「千歳……さんは……?」
もぞりと顔を起こすと、ようやく結ばれたはずの恋人の姿がない。そんなに体力があるように見えないが、もう起きているらしい。
一緒に目を覚ましたかったと思いつつ、唯は身動ぐ。足を動かし、つま先が床に当たると、そのまま崩れ落ちるように床にしゃがみ込む。こうでもしないと、ベッドから出られそうになかった。
「うぅ……うん……」
ベッドから出ても、腰に力が入らない。足どころか手も力が抜けているので、服を直すことすら困難だ。あられもない姿だと言うのに、羞恥を感じられるほど意識もはっきりしていない。
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