第5章 全部あげたい(2)

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 唯のナイトドレスを直した千歳は彼女を横抱きにして、寝室を出る。リビングから差し込む日の光を浴びれば、すこしずつ目が覚めていくだろう。唯をソファーに座らせて、作ったばかりのサンドイッチをテーブルに並べる。飲み物は悩んだが、水にして、まだすこしふわふわしている彼女の口元にストローを咥えさせる。すこし恥ずかしそうにしながらも、素直に水を吸う姿に千歳は満足した。拒まれないというのはいいことだ。  しかし、この状態では唯はサンドイッチを持って食べることはできないだろう。そう判断した千歳は、さらにサンドイッチを小さく切って、唯の口に直接運ぶことにした。 「唯、あーんしてください」 「へ……」  そこまでしなくとも、と唯は思う。  けれど千歳は、楽しそうだ。愛おしそうに見つめてくる千歳に負けて、唯は唇を開く。実際、両手を上げるのも気怠かった。食べやすい大きさで口元に運んでくれるのはありがたい。……ものすごく、恥ずかしいけれど。  唯が唇を開くと、その中に優しくサンドイッチが入っていく。 「美味しいですか?」 「美味しいです」 「よかった」
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