第5章 全部あげたい(2)

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 千歳はネックレスを取ると、唯の正面から腕を回す。昨晩、何度も「もう一回」と零しながら唯を抱いた余裕のない姿はどこにもない。むしろ唯の方が、これからはちゃんと恋人なのだから自分からくっつきたいと思っていた。 「昨日の告白のことなんですけど、選択を迫るような形になったので。きちんと診察を受けた後、それでも俺が好きだと思ってくれるなら──俺の恋人になってください」 「え」  聞き間違いかと千歳を見る。  もう恋人ではないのか。  何故、そこで猶予を出すのだろう。  驚きで固まる唯に、千歳は目尻を下げる。彼女の反応が嬉しかったのだろう。ならば余計に、一度手放す意味が分からない。 「全部終わっても好きなんですけど……!」 「区切りって大切じゃないですか」 「じゃあ、今の関係は」 「限りなく恋人に近いけど恋人ではない関係です」  結局、まだ恋人ではない。 「そんな……」 「だから早く病院に行ってくださいね」  そして、何もなければその時に千歳を受け入れるかどうか決めて欲しいと彼は言う。  ここまで来て、選択を変えるわけがないのに。  唯は胸元のネックレスに触れる。
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